★洞穴だより★

ウッドデッキにムートンの敷物「ムゥさん」を出して寝そべり、
日の光を浴びながらコーヒーを飲む
太陽に炙られてわたしの陰気が湯気のように立ち上る
今年からヨガを再開しよう
むかし習った動きができるように
体の自由を取り戻していこう
☆　☆　☆　☆　☆
この「ムゥさん」は、
娘が幼稚園の年長組の頃、
留守番の相手にとわたしが買い与えた
ネバーエンディングストーリーのファルコンなのです

腹減った！
飯食わせ！
ドンドンドンドコ持って来い
台所に立つわたしの
腹の太鼓が鳴り響く
☆
娘の弁当を作って学校に送ってから二度寝
ベットから起き上がったのは午後二時すぎ
三時半には仕事に出かけなければならない
ブロッコリーを茹でて
ニンジンを刻み
一昨日から冷蔵庫に残っている
カブの葉っぱの胡麻和えと一緒に炒め
ショウガと醤油で味をつけた豚肉の細切れを焼く
隣りのコンロで
里芋とサツマイモの素揚げ
外の雨音と油が跳ねる音が面白い
今日もたくさん作ってたらふく食べてしまった
☆

梅にスイセン、ヒヤシンスに沈丁花
咲いて香って散っていく花たちを
鬱々としているうちに撮りのがしてしまった
今はチューリップが咲いている
チューリップの歌は
球根を植えて春を待ち
芽が出て花が咲くまでを
まだかまだかと心待ちにして
ようやく花が開いたときの喜びを表現しているのだなぁ……
風に揺れときにはあおられながらも
たおやかに立って微笑むうりざね顔
蕾のころは青くツーンと尖っていたのになぁ……

明日から新しい学年が始まる
彼女は宿題のレポートに行き詰まったことをきっかけに時雨れだす
「やっぱり学校へ行くのが怖い」
「学校にいると身動きがとれなくなる」
「そんな自分が苦しいんだ、悔しいんだ」
「どうにかしたい、どうすればいいんだよぉ」
わたしにどうにかしてほしいと言ってくるくせに
アドバイスしても「ママじゃないからできない」とはねのける
そんな繰り返しに今日も背を向け目をそらし
嫌悪感をあらわにして家を飛び出す愚かなわたし
☆
自暴自棄のクサクサした気持ちでアクセル踏み畑に到着
隣りの畑は良く見えて、植えた６つのジャガイモが葉を茂らせていた
わたしのジャガイモは葉を広げ始めたばかり
残りの１つは深植えしすぎて腐ってしまったかなと心配して
植えたあたりに指を突っ込んで土をのけてみたら芽が出ていた
☆


☆
きっと彼女もジャガイモの芽
今の精神状態を改善しようと葛藤しているんだよね
そして今、芽を出したところ
うちのイモ娘に太陽の恵みあれ

女神さまが発行している「風のたより」４月号の付録は「紙ツバメ」
猫用オモチャ「ダバード」の棒につけてブンブン遊んでいます
猫ちゃん大興奮！

３月７日（土）の夕方
自転車で職場に向かう途中の道で電柱にぶつかり転倒
何のこれしき！遅刻してなるものか！
起き上ってペダルをこぎ進めたら壁に衝突
ハンドルが曲がっていたのだ
電子部品も壊れてしまって電動アシスト自転車は無残な姿に成り果てた
ほぼ球体のわたしはかすり傷程度で一見何事もなかったようだが
胸を強く打ったので、くしゃみや咳をするたびに痛くて怖くて……
修理を頼んだ自転車屋さんが借してくれた代車は普通のママチャリ
行きはスイスイ、帰りはつらい上り坂
教材を詰め込んだ重いバッグを前かごに乗せて
アンニャロ、コンニャロと
自分を呪った人間を脳裏に浮かべて逆恨みしながら
自転車を押し家路を辿る
あの事故から３週間
今日引いた「女神のガイダンスオラクルカード」は
「マリー・マグダレン」（マグダナのマリア）
『あなたを傷つけたり、間違った判断をしている人への愛の気持ちを送る』
『人に対する許せない気持ちを手放し、自分を癒すために前進する』
というメッセージに共鳴した
もう咳をしてもくしゃみをしても胸は痛くない
体は快復した
呪いは解けた
もう許そう
いや、許さない
もっと用心深く人と接しよう

学校から帰ってきた娘が
トイレットペーパーの上に花を並べて押し花づくりをしていた
玄関先に咲いていたビオラ、シクラメン、クロッカス
いまも昔も変わらぬ楽しみ

遅刻して登校する娘を車で送った後
正午すぎまでコタツで寝てしまう
今日も２畝耕す予定だったのに
「今年こそ早起きして頑張ります」なんて
畑仲間に挨拶をしてしまったのに
あ、、、みっともない自分、、、
せめて先週の土曜日から保留になっている
ビワの染液を作ろうと物置に大鍋を取りに行く
☆
そこで見つけた娘が低学年の頃の絵日記

☆
七月十四日　月ようび
きのうのかえり大あめがふりました。
かさをひろげてたらあめがかさにあたって
ボンボンて音がなりました。
かみなりがなったあと
あめがさっきよりももっとつよくたくさんふりました。
かみなりがきゅうにドードカーンってなって
おちてこないかなってすこししんぱいでした。
大つぶのあめがコンクリートのどうろにあたって
きれいな王かんがたになってとてもきれいでした。
いえにかえったらママが
あめはおまつりだといっていました。
☆
うぅ、、、、そうだったんだよね
わたしは娘にこの世界を素敵な物語にして語っていた
、、、いや騙っていた
娘は体験する自然現象をしっかりと見て聞いて感じて
その物語を信じていた
そして、いま
現実の世界との関わり方や自分の在り方を模索している
わたしはいま、娘に何を語っているのか
、、、いや騙っているのか
頑張って学校に行って、授業に参加して、成績を上げろと言っている
彼女はカバンに物語を入れて毎日学校に行くようになった
「指輪物語」がとっても面白く、続きがあって楽しみだという
そうだよ、人生も物語のように続いていくのさ
生きるってことは次のページをめくっていくことなのさ

土づくりが始まった
今度の畑は田んぼの中
小鳥が、掘り起こした土の中からミミズをついばんでいた
力いっぱい振り落した鍬が冬眠中のカエルの足を一本奪ってしまった
どうかこの生態系の中でしあわせな転生ができますように……

寝ぼけ眼のこの子も掘り起こしてしまった
目を開けたくても開けられないらしく
しばらく瞼を動かした後で目を閉じてしまった


鬼のわたしは土に向かうことで人になれるような気がする
日頃から憎悪している人間どもや
不愉快な出来事を脳裏に浮かべて
コンニャロ、コンニャロと刃を刺していく
一仕事終えたあとは、娘に嫌味の一つさえ言う気力がなくなる
大きく広げた股の間を冷たい風が吹き抜けて
とても気持ちがよかった

地主さんに返却することになった貸農園
「更地にするので１月いっぱいで畑の野菜を引き上げてください」
という連絡が来たのに行けずにいたら
日曜日
「収穫したので取りに来てください」
という連絡をいただく
隣の畑のおじさんも協力して収穫してくれたとのこと
段ボール箱いっぱいの
ダイコン、ニンジン、サトイモ、ハクサイ
やろうと思って始めたことをやりきれずにいる自分が情けない
せめて料理をしておいしくいただこうと
ダイコンの皮をむく
流しに残った最後の１本は
不誠実な自分を罰するように丸かじりした
辛みと苦みが口いっぱいに広がる
一日早めの恵方巻だ

ダイコンと牛肉の煮物とアブラナとニンジンの炒め物